手術療法
手術に抵抗がない方は手術に踏み切るのも一つの手です。
方法大腿骨内反骨切り術、
大腿骨外反骨切り術、
臼蓋形成術、
Chiari骨盤骨切り術などがあります。
大腿骨内反骨切り術
大腿骨内反骨切り術は前股関節症及び初期変形性股関節症に適用される手術です。
大腿骨の付け根(骨頭)を内反させることにより関節のずれを向上させ、
軟骨がすり減って隙間がなくなった関節同士を引き離す効果が期待されています。
日本での股関節手術の標準的な方法で、他の術式に比べて身体へのダメージが
少ない方法です。
臼蓋形成不全の併発、変形性股関節症の病期の進行、加齢などの要因で
手術成績は下がります。手術後の病期の進行は4人に1人ほどで、
5年〜10年は病期の進行を予防できます。
大腿骨外反骨切り術
大腿骨外反骨切り術は進行期及び末期変形性股関節症に適用される手術です。
大腿骨の付け根(骨頭)を外反させることにより加重のかかるポイントを
ずらし、関節への負荷を減らす方法です。
日本では股関節手術の中では進行例に多く用いられている方法です。
臼蓋形成不全の併発、変形性股関節症の病期の進行、加齢などの要因で
手術成績は下がります。
先天性股関節脱臼がある場合にも適用されますが、
手術後5年では2人に1人ほどで病期の進行が見られ、
手術後10年では3人に1人が病期が進行します。
また、手術後10年では5人に一人が人工関節に移行しています。
臼蓋形成術
臼蓋形成術は、前股関節症及び初期変形性股関節症に適用される手術です。
自分の骨盤の骨(腸骨)から骨を採取し、臼蓋の荷重部となる関節包に
自家移植する方法です。
他の術式に比べて身体へのダメージが少ない方法ですが、
臼蓋形成不全がひどい場合には慎重になるようにと注意喚起がなされています。
変形性股関節症の病期の進行、加齢、臼蓋形成不全の度合いなどの要因で
手術成績が下がります。
術後20年の状態では44〜55%の関節が良好な状態を維持できています。
関節適合性などの問題で骨切術などを併用した場合、75%が成績良好です。
30歳以下で手術した場合の78%、30歳以上で手術した場合の56%が
日本整形外科学会が定めた股関節の機能改善を認めています。
病期の進行は術後20年で26%ほどです。
Chiari骨盤骨切り術
Chiari骨盤骨切り術とは、関節包直上の高さで腸骨を直線状に切骨して
股関節を含む末梢側を内方に移動させる手術であり、前股関節症から末期の
変形性股関節症(股関節症)まで幅広い適応範囲があります。
しかし、産道の狭少化が危惧されるため、若年女性への適応には注意が必要な術式です。
術前の骨頭の形が手術成績に影響を与えます。
痛みの緩和は期待できますが、関節可動域が下がります。
若年層では手術成績が良好で45歳以下では80%ほどが良好ですが、45歳以上では50%ほどに低下します。
寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術
寛骨臼回転骨切り術・寛骨臼移動術は臼蓋形成不全を伴う
前股関節症及び初期変形性股関節症に適用される手術です。
臼蓋形成不全が原因で起こる2次性の股関節症に対して行う手術で、
日本でも広く普及しています。
しかし、初期以外の股関節症に対する適応は意見が分かれています。
進行期の変形性股関節症に対しての成績は術後10年で93%が進行しており、
骨頭変形があった症例では骨頭変形がなかった症例に比べて明らかに成績が
悪いことが報告されるなど、あまり結果は良くありません。
筋解離術
筋解離術は初期から末期までの変形性股関節症による疼痛緩和に有効とされている術式です。
低侵襲で除痛効果が期待できる術式とされています。
しかし、長期成績の報告は1966年以降日本以外では存在せず、あまり好まれて
行われていない術式と言えます。
疼痛緩和が期待でき、人工関節への移行も少ない一方で、可動域のスコアが低く、
痛み以外の様々な機能障害の原因となります。
関節鏡視下手術
関節鏡視下手術は、関節唇障害や関節内遊離体を合併した変形性股関節症の
症状緩和に有効な術式です。
軟骨変性が認められる場合では術後成績が悪く、良以上がおよそ28%、
不可が72%です。
術後成績が不可のうち、60%が人工関節に移行しています。
股関節固定術
股関節固定術は関節温存術または人工股関節全置換術が適応とならない若年で片側性の末期変形性股関節症の疼痛緩和に対して行われる方法です。
化膿性股関節炎の既往のある症例や10〜20歳代の関節温存が困難な症例に対しては重要な選択肢となります。
術後の満足度は高く股関節の痛み自体は改善されますが、股関節の固定に伴い
腰痛(65%)や膝痛(35%)、日常生活への影響(86%)が生じます。
腰痛や膝痛が原因で、人工関節に移行することが多く、21%ほどが人工関節に
移行しています。
人工股関節全置換術(THA)
人工股関節全置換術(THA)は生活の質や歩行機能の改善を目的に行われる
変形性股関節症に対する治療方法です。
術後1年以内では股関節が原因で起こる身体の痛み以外の問題である可動域制限や歩行機能、生活の質などの全ての問題が改善します。
しかし、術後5年以上経過観察を行なった研究は少なく、THA施行後5年以上経過
した場合の疼痛や歩行機能、生活の質がどのように変化するかの厳密な結果は
わかっていません。
術後はスポーツも行うことができ、およそ半分である52%が術後に週1回以上のスポーツを行なっているという報告があります。
ここでは変形性股関節症の手術療法を解説してきました。
しかし、手術をしてもその後の生活次第では
病期が進行することがあるため保存療法を
併用することが望まれます。
うまく保存療法を行えば症状は緩和されますし、結局手術をしても
状態に合わせた保存療法を行わなければ状態が悪化します。
どうせ保存療法をしなければならないのであれば、
最初からしっかりした保存療法を行うことをお勧めします。
鍼灸院おるきではM-Testという治療法をベースに独自のアプローチを行い結果を出しています。