腰椎分離症・すべり症があるからといって、それがその人の腰痛の原因になっているわけではない。
それを履き違えたら、治るものも治らなくなる。
スポーツ障害の腰痛でよく聞くのが腰椎分離症(診断によってはすべり症とも言われる)。
ちょうど、この病気で相談に来た学生スポーツ選手がいた。
彼が腰を痛めたと自覚したのは8月中旬。
3週間も痛みが引かず、部活に参加できていないため何とかしたくて僕のところに紹介でやってきた。
ただ、それまでにトレーナーさん3人を回って色々な治療を受けて来て、それでも改善が全く無かったから心配だった。
骨は大丈夫か?
後日の結論から言うと彼は腰椎分離症を発症していた痕があるけれど、それはもうかなり古くて骨がくっつかない状態になっていたらしい。
ただ、そうなると鍼灸の適応だ。YNSA®、M-Testでしっかりケアすることで必ず良くなる。
彼の身体を診ていくとふくらはぎの柔軟性が低下していることと腰椎の回旋はもちろんだけど、頚椎の回旋がうまく行われていなかった。
頭蓋仙骨療法という考え方があるんだけど、頚椎と腰椎は対になって動いているんだって。
こういう時、頚椎の回旋を改善すると腰椎も動き出すから面白い。
YNSA®とM-Testで身体の動きを改善したらほとんど痛みはなくなった。
ただ、翌日部活で動こうとすると痛みが出たらしい。
診察室での評価のための負荷と、実際にプレイする負荷では負荷の量も質も違う。
実際にプレイできるレベルまで持ち上げなければ意味がない。
実は、今日、この後2回目の診察なんだ。
今日はバットを持ってきてもらう。
前回は軽く診察室で飛び跳ねてもらって痛みがないレベルまでの改善だったけど、今日は素振りをして痛みが全くでないレベルまで身体を導く。
ただ、試合や練習になるとそこにボールの反発力が発生する。
だから、より完璧を目指して治療しなくちゃいけない。
反発力の再現は院では難しいけれど、その状態でも問題ないように約束したからな。
彼が2回目の受診を決めるのに、ちょっとした葛藤があった。
1回目の治療で軽くなったのに症状がぶり返したから、自分の身体に自信がなくなったらしい。
整形外科を受診したら、腰椎分離症・すべり症の診断を受けた。
先生の説明では、『腰椎分離症を発症していた痕がある。ただ、骨の状態はもう、古い傷になっているからくっつくことができない。腰椎分離症で腰痛が出ているので、リハビリでしっかり競技ができる身体を頑張って作ろう。』
だそうだ。
いやいや、ちょっと待ってよ。
確かに腰椎分離症は既往として持っているのかもしれない。
でも、痛くなったのはここ数週間だよ?
そんな、骨がもうくっつかないほど古い傷になっているんだったら、腰椎分離症になっていた時期には腰痛はなかったはずだし、腰椎分離症が原因で腰痛になったんだったら、まだまだ回復期だから骨も保存療法でくっつくでしょ。
治療する側が、それを認識できてなきゃ良くなる腰痛も良くならないよ。
腰椎分離症の既往がわかったことで言える結論は、今回の腰痛の原因は本来動かないはずの腰椎が、分離症の発症部分で動きすぎたことによる腰椎捻挫でしょ。
じゃあ、あとは筋肉の柔軟性を高めて、腰椎に負担のかからない動きができるようになれば良い。
それと、痛みが取れたら再発防止のためにリハビリね。
体幹筋力を強化して、痛みが出ない身体を作っていく必要がある。
これから来る彼はかなり才能がある選手だから、ここで潰すわけにはいかない。
しっかり動けるようにして、夢を追いかけ続けられる選手でいてもらおう。