このページでは多系統萎縮症の病気の解説、西洋医学での対処と医療の現在地などについて解説しています。また、鍼灸治療でできること、多系統萎縮症の治療に鍼灸を導入する際の注意点などについても解説いたします。
多系統萎縮症とは?
多系統萎縮症とは、大脳、小脳、脳幹、脊髄といった脳の大切な部分が障害を受けることで発症する病気です。
脊髄小脳変性症と呼ばれる疾患の一部で、多くの患者さんは遺伝性ではなく、孤発性と呼ばれる、身内、ご家族には同じような病気の人はいないけれど発症してしまうという様相を呈しています。
以前は症状に合わせて大きく3つに分類されており、
- 線条体黒質変性症
- オリーブ橋小脳委縮症
- シャイドレーガー症候群
と呼ばれていました。
しかし、いずれも病理学的には同じ特徴を有していることから、現在では一つの疾病概念として捉えられています。
残念ながら、多系統萎縮症に対する根本的な治療法は確立されていません。さまざまな症状が現れるため、西洋医学の投薬を中心にサプリメントやリハビリテーション、鍼灸などあらゆる選択肢で各種症状に対して対応する必要があると考えられています。
多系統萎縮症の原因は?
多系統萎縮症の原因の一つと考えられているものに、αシヌクレインと呼ばれる異常タンパク質の蓄積が挙げられます。
多系統萎縮症やアルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患では、様々な異常タンパク質が脳内に蓄積して症状を引き起こすと考えられています。
αシヌクレインが脳に蓄積すると、脳の神経の中に異常な架橋構造を作ります。この架橋構造が、脳神経の電気信号の正常な伝達を妨げることで神経繊維が正常に機能しなくなっていきます。
この時、αシヌクレインの蓄積が海馬領域など記憶に関わる部分に生じるとアルツハイマー病やレビー小体型認知症、小脳に蓄積すると脊髄小脳変性症、小脳、中小脳脚(中脳と小脳をつなぐ部分)、脳幹(生命の中枢を司る部位で、黒質、オリーブ核などにより形成されている)、大脳基底核、大脳(特に運動野)など、自律神経に関連する各部位など幅広い部分で蓄積が起きると多系統萎縮症が発症します。
αシヌクレインは体内でエネルギーを作り出すミトコンドリアが老化や遺伝子のコピーミスによって劣化することにより、エネルギーを作り出した際に老廃物として作られます。
多系統萎縮症の治療
多系統萎縮症では、病気を根本的に治療する方法は残念ながら見つかっていません。ただ、エーザイさんや小野薬品さんなどがαシヌクレインを投影する技術や、アルツハイマー病に対してですが、αシヌクレインに働きかける新薬を開発するなど、技術的にはもうすぐそこまで来ているような気がしています。
現在の医療では、パーキンソニズム症状などに対してパーキンソン病に使用される薬や、自律神経症状などに対して対処するなど、対症療法が中心となっています。
サプリメントなどを用いる方もいらっしゃいます。サプリメントに頼る方は、ミトコンドリアの老化を抑制すると言われているコエンザイムQ10や動物実験レベルではαシヌクレインの除去に効果が認められていたウコン(ターメリック)などが含有されたサプリメントを摂取することが多いようです。
多系統萎縮症に対する鍼灸治療
鍼灸治療では、ふらつきや身体の動かしづらさ、ふるえなどの各症状に対して施術を行うことが一般的です。根本治療ではなく、症状を緩和させ、日常生活動作(ADL)を少しでも高いレベルで保つための施術が行われます。
ふらつき、めまい、血圧の安定など自律神経系への対処は鍼灸の得意とするところですし、身体の動かしづらさなども筋緊張を緩めておくことでずいぶん楽だと感じていただけるはずです。
多系統萎縮症治療の今後
恐らくですが、今後、多系統萎縮症の新薬が出てくるとなった時、最初に効果が認められるお薬はαシヌクレインの除去薬になるだろうと予想しています。
このαシヌクレインの除去薬の特徴は、治療を開始した時点で病気の進行をストップさせてくれる。という効果です。
そのため、もし新薬ができたとしてもADLが低下してしまっており、寝たきり状態になっていたとしたら、病気の進行がストップしたとしても生活は大変になるでしょう。
いつも患者さんにお伝えしていますが、ADLを高いレベルに保ち、症状はあるけれど進行をできるだけ抑制しておくことで、未来に希望をつなぐことができます。
そのためにあらゆる手段を使って、病気の進行を抑制しておく必要があります。
良く、『これから〇〇という方法を試してみるので今やっている治療をやめます!』と言われる患者さんがいらっしゃいますが、これは悪手だと思います。
西洋医学、東洋医学、サプリメント、その他の療法、自分に試すことができるあらゆる手段を使って、病気の進行を抑制し、ご自身、あるいはご家族の未来を守っていただきたいと思っています。
多系統萎縮症に対する当院の対処
当院では、YNSA®︎、M-Testの他、多系統萎縮症の周辺症状に対して効果的と考えられる鍼灸治療、整体、マッサージなどを組み合わせて治療を行っています。
また、ふらつきなどが症状として現れており、身体もこわばって肩こりや腰痛がある患者さんに対しては保険を使った訪問治療も選択肢に入ってきます。
ただし、訪問治療には必ず医師の同意書と診断書が必要になります。また、多系統萎縮症そのものに対しては訪問鍼灸の保険が適応されませんので、肩こりや腰痛などのその他の身体症状を自覚しており、かつ、かかりつけの医師が鍼灸に対して理解がある、症状がひどく、自力通院が困難である、当院からご自宅までの距離が16km以内である、当院の訪問枠に空きがあるなどいくつか乗り越えなければいけないハードルもあります。
いずれにしても、症状の進行は待ってくれませんので、多系統萎縮症と診断された方で鍼灸治療を試してみたいと考えられている方はできるだけ早くお問い合わせくださいませ。
福岡市で多系統萎縮症の鍼灸治療をお考えの方は福岡市西区の鍼灸院おるきにお任せください。