脊柱菅狭窄症に対する鍼灸治療ー論文より①ー

こんにちは!

福岡の鍼灸院おるきの小野です。

今日は最近問い合わせの多い脊柱菅狭窄症の鍼灸について。

腰痛や下肢痛、しびれ、間欠跛行などの症状の脊柱菅狭窄症。先日のNHK番組の反響もあり福岡で脊柱菅狭窄症の鍼灸が受けられるところはどこか?っていう問い合わせが増えてきました。

ということで、せっかくなので先日の東京大学病院が行った研究論文はどれかな?と思い、探してみました。

そこで出てきた結果がちょっと、がっかりだったので、そちらの解説を行っておきます。まず、

『脊柱菅狭窄症 鍼灸 論文』

の検索ワードで調べてみたら、出てきました。東京大学医学部付属病院と筑波技術短期大学の研究です。

すぐ見つかったのはこの論文でしたが、NHKで紹介された結果と異なるので、そもそも違う研究グループの研究のようでしたが、簡単に見つかった論文はこれでした。

行われた研究は、脊柱菅狭窄症患者62名(男性36名、女性26名)に対して鍼灸を行い、JOAスコアがどう変化したかという研究でした。

JOAスコアとは、痛み、運動機能、日常生活の影響を包括的に評価するアンケートになります。

論文サイトでは抄録しか見れなかったためどの程度の期間の研究だったかはわかりませんでした。

著者らによると、CT上、MRI上、臨床症状上で脊柱菅狭窄症と診断された62名に鍼治療をした前後のJOAスコアがどう変化したかを評価したとありました。

治療は腰部の狭窄部位周辺の軟組織に鍼を刺し、鍼に電気を流す電気刺激を行うという方法で治療をしていました。

狭窄部位の血液循環を良くする目的でこの方法を取ったということでした。

結果は14例で非常に良好、17例が良好な結果になり、悪化した例はなかったということでした。

64人中31人が症状改善ということで、脊柱菅狭窄症に対する鍼灸は有効と結論づけていました。

正直、テレビでとても効果があるように紹介されていたので、この論文を読んだ限りでは効果が少ないように感じられました。
もう少し効果出せるんじゃないの?と思う鍼灸師も多いと思います。

しかし、それは実は当たり前なのです。

西洋医学と東洋医学では、診断基準が異なる場合がほとんどです。

先生の治療方針にもよるのですが、単に解剖学的に身体を捉え治療する先生、脈を診て治療する先生、舌を診て治療する先生など様々です。

しかし、多くで共通するのが『患者さん個人の状態に合わせた治療を行う』ということです。

まぁ、実際には西洋医学でも患者さん個人の状態に合わせて治療が変わりますよね?おんなじ病気だったとしても、アレルギーの有無や体質などによって薬や治療が違うはずです。

しかし、多くの論文では同じ方法で行わなければその方法論の効果が評価できないという考えから、どんな症状の方にも同じ治療を行います。

そんなわけで、僕も研究を行っていた時に感じたジレンマですが、そもそも医学研究の多くが西洋医学の基準に合わせて枠組みを作っているので、その中で治療をしてその結果を評価してもどうしても結果が実際の臨床通りにならないことが多い印象を受けます。

今回の論文では、鍼灸を行った前後での比較だったので単純な前後比較。エビデンス(科学的根拠)の若干低い研究になります。

NHK放送時の研究では、痛み止めによる薬物療法と腰痛体操によるリハビリとの3群比較だったので、少なくともランダム化比較試験という、エビデンスレベル高めの研究でした。

単純な前後比較では治療方法を決められる枠組みが狭いため、NHK放送時の研究の方がより実際の臨床結果に近いかと思われます。

そちらの論文は日本語検索で見つからなかったので、多分英語で海外雑誌に掲載されているんでしょうね。


今日は、先日のNHK放送『東洋医学ホントのチカラ』を受けてさくっと論文検索してみました。

出てきた論文は先日の放送のものとは違いましたがそれでも少し良好な結果にはなるという結論は得られた内容でした。

まだまだ色々な方法で介入研究を行った論文があったので、折を見てご紹介したいと思います。


筆者情報
小野修司
鍼灸師・スポーツ健康科学修士

鍼灸師の免許取得後、技術と知識の研鑽のために福岡大学大学院に入学。
スポーツ医学を学びながら関節運動の研究を行い修士号を取得。
大学院に通いながらも地域の病院での臨床やアスリートのケアを精力的に行い臨床経験を積んだ。
福岡大学病院東洋医学診療部に鍼灸師として初めて入職を果たし外来診療も担当。
その後、培った技術を大学病院以外でも活かすため福岡市西区今宿に鍼灸院おるきを開院。
1年後、福岡市中央区唐人町に鍼灸院おるき唐人町治療院を開院。
現在に至る。

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