変形性膝関節症のガイドラインまとめ
多くの治療ガイドラインと同様、変形性膝関節症にもガイドラインが存在します。
高齢者の膝痛の大部分を占める変形性膝関節症(膝OA)について紹介し、当院の見解も添えて解説します。
実は、膝OAの原因は不明
膝OAの疾患概念は,教科書的には「関節軟骨の変性・摩耗から始まり,進行すると軟骨下骨の硬化や骨棘形成などの骨増殖性変化を生じ, 関節の変形に至る」疾患である.しかし,外傷や稀なアルカプトン尿症などの代謝異常などの場合を除き,多くは原因不明の一次性であり,明確な診断基準もないのが現状である.
〔日内会誌 106:75~83,2017〕
とあります。
膝関節痛の主な原因とされている膝OAの原因は、加齢、過体重、遺伝によるもの、外傷によるものなどいくつか挙げられていますが、
外傷や稀なアルカプトン尿症などの代謝異常などの場合を除き,多くは原因不明の一次性であり, 明確な診断基準もないのが現状である.
〔日内会誌 106:75~83,2017〕
とされていて、「年齢のせいですね」と言われる患者さんは多いですが、実は年齢と膝OAの因果関係はわかっていません。
膝OAの進度と症状
膝OAは、初期の症状は,動き始めの痛みです。
「椅子から立ち上がったときに痛みを感じる。歩き始めると痛みはない」という症状が主体です。
レントゲン上では関節の狭小化が見られ、軟骨が硬くなっているのがわかります。
中等度になると、初期症状に加え、 膝が張った感じ(関節液の貯留)や階段昇降時の痛み、長時間の歩行での痛みが出現します。
さらに進行すれば、立つだけで痛みが出たり、完全に伸ばしたり曲げたりができなくなります。
関節裂隙は完全になくなり、関節にそって骨棘が形成され、次第に大きくなります。
国内外の膝OAの治療と推奨度
日本(特に、整形外科)で受けられる膝OAの治療はいくつかありますが、海外(Osteo- arthritis Research Society International)(OARSI)と日本整形外科学会膝OAガイドラインでは治療と推奨度がわかれています。
簡単に説明します。
内容 | OARSI | 日整会 | 日整会の推奨度 |
全般 |
|||
非薬物療法と薬物療法の併用 | 96 | 94 | A |
非薬物療法 |
|||
ライフスタイルの変更と患者教育 | 97 | 97 | A |
定期的な電話指導 | 66 | 58 | C |
理学療法士の評価と指示、助言 | 89 | 86 | B |
定期的な有酸素運動、筋力強化訓練、可動域訓練 | 96 | 94 | A |
減量・ダイエット |
96 | 96 | A |
杖などの歩行補助具 | 90 | 94 | A |
膝関節装具 | 76 | 76 | B |
足底板、インソール | 77 | 81 | B |
温熱療法 | 64 | 63 | C |
経皮的電気刺激療法(TENS) | 58 | 46 | C |
薬物療法 |
|||
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛薬 | 93 | 92 | A |
湿布・温湿布 | 85 | 82 | B |
ステロイド関節内注射 | 78 | 67 | C |
ヒアルロン酸注射 | 64 | 87 | B |
グルコサミン、コンドロイチン硫酸などのサプリメント(症状緩和) | 63 | 41 | I |
グルコサミン、コンドロイチン硫酸などのサプリメント(軟骨の保護) | 41 | 31 | D |
外科的療法 |
|||
人工膝関節全置換術(非薬物療法と薬物療法で改善がみられない場合) | 96 | 94 | A |
単顆膝関節置換術 | 76 | 77 | C |
高位脛骨骨切り術→関節置換術の適用を10年遅らせる | 75 | 83 | B |
関節洗浄及び関節鏡視下デブリドマン | 60 | 75 | C |
関節置換術で効果が認められない場合の関節全固定術 | 69 | 55 |
C |
日関病誌,35(1):1〜9,2016より
膝OAの治療法
膝OAの治療法は国内と海外であまり差はありませんが、サプリメントや関節内注射などで差があります。
サプリメントは日本では法整備も含めて浸透していませんので、仕方がないかもしれませんね。
海外ではサプリメントの有用性についても法整備や報告があるため、日本よりも情報が入ってきます。
関節内注射は日本で多く採用されいてるのがヒアルロン酸注射なのに対して、OARSIでは関節内ステロイド注射になっています。
日本ではあまり関節内ステロイド注射を行っている実態がないため推奨度に違いがありますが、リスク:ベネフィット比ではヒアルロン酸注射よりも関節内ステロイド注射の方が有用です。
これは診療実態の違いによるものとされています。
膝OAに対する鍼灸治療の有用性について
膝OAに対する鍼灸治療は、世界保健機構(WHO)でも効果が認められている治療法です。
当院で採用しているM-Testは日常生活に寄り添った治療法としての評価が高く、OARSIや日整会ともに最高評価とされているライフスタイルや患者教育に最適な方法となっています。
最近では、膝関節の痛みを多角的に観察し、痛みを改善する方法が注目されていますが、OARSIや日整会のガイドラインにはまだその効果が評価されていないですね。
膝関節に負担が集中する要因はたくさんあります。
足関節の柔軟性、股関節の柔軟性、背骨の柔軟性、歩行の癖、重心の取り方など上げればキリがありません。
当院ではその原因の違いをひとりひとり分析し、その場で痛みの改善を自覚できる治療を提供しています。
今日から階段で困らない身体を手に入れたい方は福岡市の鍼灸院おるきにご相談ください。