先日、裏の倉庫を整理していると懐かしいものが出てきました。
それは、昔使っていたカルテです。
大まかに疾患別に分けており、いつでも見直せるようになっています。
どんな治療をやったのか、どの部位に鍼をしたらどういう反応が出たのか、
どの鍼を使ったのか、これまでのべ数万人の施術をしてきましたが、
これを見れば施術の時にどんなことをお話ししたのかまで思い出せます。
カルテには他にも、こんなことを書いています。
・身体が元気になった時にやってみたいこと
・患者様のご家族の方のこと
・仕事でどんなことがあったのか
患者様との世間話も具体的に書き留めていて、
これが治療の参考になることもありました。
さて、私には普通のカルテとは別に、大切に取っているカルテがあります。
治療がうまくいかず、役に立てなかった方のカルテです。
うまくいかなかった理由は単純です。
・単なる技術不足
これに尽きます。
このカルテの患者様たちは、ひょっとしたら今なら完全に治せるかもしれません。
「生まれつき臼蓋が浅いから仕方がない」
「骨盤がずれているから仕方がない」
「年のせいだから仕方がない」
仕方がない、仕方がない、仕方がない。
病院や整骨院で言われたというこの言葉に、
「治せないのは仕方がない」
と当時の私がどこかで甘えていたのかもしれません。
人の身体を治療し始めて、もう10年になります。
「思い通りに治せない」という壁にぶつかるたび、
その患者様のことが頭から離れなくなります。
今、私のところには技術を学ぼうと月に数人の治療家が来られます。
医師や看護師、当然鍼灸師の先生もいらっしゃいます。
今ではそのような方に名人と言っていただけることもありますが、
そのような立場になっても、当時私が治せなかった患者様と
そのカルテがある限り、やっぱりまだまだ未熟と感じます。
誰かが言っていたことがあります。
「治療家は治せなかった患者様の数だけ成長する」
悲しいことですが、これはまぎれもない事実です。
M-Testは効果がある場合もわかりますが、効果がない場合も
その場で現実を突きつけられます。
恐らく、人生をかけて治療の道を追求しても
全ての患者様を治せるようにはならないでしょう。
やはり、どれだけ技術を磨いても治らない患者様は現れます。
ただ、そういう「壁」となる患者様がいるからこそ、
より多くの患者様を治すことができるようになれるのだと
思います。
・臼蓋形成不全と診断された股関節痛
・ひどいヘルニアで全く腰が曲がらなくなったスポーツ選手
・足の痛みで動けなくなった働き盛りの男性
今では完璧に治せる自信のある方達は、一体どうしているでしょうか。
願わくば、もう一度会って治療してみたいと考えています。
これからも役に立てなかったカルテを取りため、
誠実に治療と向き合いたいと思います。
福岡市西区今宿の鍼灸院おるき
腰痛、股関節痛や脊柱管狭窄症、膝の痛みでお困りの方はご相談ください。