こんにちは!
福岡市西区今宿の鍼灸院おるきの小野です。
昨日は野球肘に悩む糸島の野球少年が相談に来ました。
成長期に多い野球肘。どんな病気かおさらいしましょう。
野球肘とは
野球肘とは、成長期の野球選手に多い肘に痛みを感じる疾患です。
オーバーユースが原因ですが、成長期には骨の成長に筋肉の成長が追いつかないため慢性的に筋肉が過緊張状態(ストレッチが足りず筋肉の長さが充分でない)になっています。
関節に負担がかかりやすい状態になっているため、その状態で運動することで痛みなどのスポーツ障害に発展します。
野球肘には外側が痛むものと内側が痛むものがありそれぞれ痛みの原因が異なります。
野球肘の原因
野球肘で外側が痛むものの原因の多くが、投球動作時の骨のぶつかりです。
投球動作時に上腕骨と前腕の橈骨がぶつかることで骨が打撲の状態になり、その結果痛みや炎症を引き起こします。
この状態が続くと、骨棘ができたり骨挫傷をひきおこします。
内側が痛むものの原因の多くは、肘の筋肉や腱、靭帯の損傷や断裂から生じます。
筋肉の過緊張からくる痛みの場合、関節には常に圧力がかかっています。
関節内圧が高まった状態で関節を動かすため、軟骨にダメージを受け炎症を起こし、出た発痛物質を受容体がキャッチすることで痛みを感じます。
靭帯損傷の場合は痛みを感じにくいため、肘の違和感などを感じることが多いです。
野球肘の治療
野球肘の治療は、従来ではオーバーユースと考えられているため運動制限が第一になります。
使わないことで、局部の炎症を抑えることが治療になるという考え方です。
が、実際に2〜3週間の安静を取っても痛みが取れないことが多く、多くの選手がそこで困り果てることになります。
今回の少年もそうでした。
実は、使いすぎ症候群は安静だけでは改善できません。
肘周囲の筋肉が過緊張気味になっているため、その部分の柔軟性を向上させる必要があります。
筋肉は充分に伸展ができないと収縮力が発揮されないため、柔軟性のない筋肉はそもそものパフォーマンスが悪い上に関節に負荷をかけて痛みをひきおこします。
筋肉の柔軟性を向上させる必要があるため、最低でもストレッチは必須になります。
鍼灸を取り入れるとなお、効果的です。
野球肘の鍼灸
野球肘に対して鍼灸を行うのは2つメリットがあります。
1つ目は、硬く緊張している筋肉の硬度を減らし、ストレッチ効率を上げてくれることです。
筋肉は硬くなると伸び縮みしにくくなり、パワー発揮がされなくなります。
そこに鍼をすることで柔軟性が増し筋肉が伸び縮みしやすくなり、関節への負担が軽減されます。
鍼をして伸び縮みしやすくなった状態でストレッチを行うと、本来伸ばせなかった組織にまでストレッチ効果が働きます。
少しの手間で、身体のケアが格段に出来るようになりますので絶対にしたほうがよい治療です。
2つ目は、筋反応時間が短縮されます。
筋肉は、脳から刺激を受けて収縮準備を始め、その後本格的な収縮が始まります。
あらかじめ鍼をしておくことで、この収縮準備の時間が短縮され、本格的な筋収縮までの時間が短くなるのです。
このメリットは靭帯などの軟部組織へのダメージを減らしてくれます。
投球時、最初からガチガチに力を入れている人はいないと思いますが、脱力した状態からの投球になります。
この時に靭帯に負荷がかかり始めるタイミングで、効率よく筋収縮が起きると靭帯へのダメージは軽減できますが、通常は筋収縮の準備期間の間に投球動作の多くが行われてしまいます。
その結果、肘関節を靭帯が支える期間が長くなり、損傷につながります。
おすすめは円皮鍼とよばれる置き鍼を1枚で良いので肘の上下に貼っておくことです。
また、お灸による温熱刺激は腱の弾性を高めてくれます。
腱の弾性も、効率の良い筋収縮には必須になりますので、日常のケアとして、野球選手、特にピッチャーは覚えておくと良いでしょう。
治療前後の状態
昨日の選手は治療前はタオルを使ったシャドーピッチングでは当然痛みがあり、肘を動かす動作でもほとんどの動作で痛みがありました。
治療時間は色々説明しながら20分程度でしたが、シャドーピッチングでも、どのように肘を動かしても痛みが出ない状態でお帰りいただくことができました。
ケアは日常的にしたほうが良いので、鍼を貼る方法やお灸のやりかた、ストレッチ方法などを詳しく伝え治療終了です。
まとめ
野球肘で悩む野球選手が多いですが、現在の日本ではスポーツコンディショニングとしてケアを受ける選手が非常に少ないのが現状です。
大学野球やプロ入りしてからはトレーナーがついていることが多いためコンディショニングは日常になりますが、中学、高校などの身体に一番負担がかかる成長期にコンディショニングを受けている選手はほとんどいないのです。
ケガ、スポーツ障害をしてからでは、組織が損傷しているため現代医学では修復することは不可能です。
※有名なトミー・ジョン手術などの靭帯再建術は、競技にはあまり必要のない別の筋肉の腱を取ってきて靭帯の代わりにするという手術です。腱が靭帯の代わりはしてくれますが、そもそも組織が違うので完全な代用はできないこともあります。
競技や選手に合わせた自宅で行える鍼灸はたくさんあります。
当院ではそういった知識や方法もお伝えすることができますので、大切なお子様の将来のために、自分自身の将来のために是非、ご相談ください。