ヘルニアはスポーツ選手やアスリートもよく悩まされる病気です。
腰痛や手足のしびれで全く動けなくなる場合がほとんどで、競技にも支障がでます。
私が大学院にいた頃、夜の8時頃になると練習を終えた選手が治療目的で研究室に集まってきていました。
その中で、ひどい腰椎椎間板ヘルニアを発症し動けなくなった選手がいました。
彼は、今現在も日本代表に選ばれるほどの選手ですが当時も日本ランキングで常に上位にいる選手で、監督から『将来有望な選手だから早くなんとかしてほしい!』と言われてはりを受けにきたのです。
状態をチェックするとSLRと呼ばれるテストが陽性であったり膝蓋腱反射消失、アキレス腱反射消失など典型的なヘルニアの症状を呈していました。
SLRとは、仰向けに寝た状態で膝を曲げないように注意しながら他動運動で足を持ち上げていくというテストです。
この状態から早く競技に復帰したいというので、鍼治療をすることになりました。
まずは彼から『いつも鍼灸整骨院で受けている方法で治療してほしい』という要望があったので、腰に鍼を刺し、電気を流す方法を試してみましたが全く変化はありません。
その後、せっかくだからM-Testをさせてほしいとお願いしもう少し治療することに。
M-Testはツボに触りながら身体を動かすことで治療判定します。
今回のヘルニアの場合、SLRの動作が全くできなかったのでこの動作をターゲットにしたのですが、足の裏にある湧泉というツボに触りながらSLRを行うと本人も、こちらもびっくりするぐらい足が上がるようになりました。
効果判定ができたので湧泉に刺さない鍼を貼り付けて治療終了。
3日ほどは腰痛などの症状がなかったそうです。
完治までは、症状が少しでも出るたびに来てもらい鍼を貼り替えました。間隔も徐々に開いてくるのでそんなに負担もなかったようです。
ヘルニアを鍼灸治療で改善していく場合、まずは治療で症状が出ない状態にもっていきます。
その後、日常生活の負担などで身体の状態が悪い時の状態に近づいていきますが、元に戻る前に治療を繰り返すことでどんどん症状の出る間隔が長くなり、改善に向かっていきます。
彼の場合には競技を継続しながら治療を行ったため少し時間がかかりましたが、試合には問題なく出場することができました。
鍼で対処できるスポーツ選手の問題はほとんどが身体の使いすぎで筋肉の状態が悪くなったことで起こります。
筋肉に爆弾を抱えないよう、普段からのお手入れを心がけることがスポーツ障害の治療と予防につながります。
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