スポーツコンディショニング② スポーツコンディショニングと鍼灸の歴史

スポーツコンディショニングと鍼灸

スポーツコンディショニングの重要性については前の記事でご紹介させていただいております。

スポーツコンディショニングとトレーナーと鍼灸師

現在、プロスポーツの現場では鍼灸師がいない現場はないかもしれません。選手のコンディショニングを行うためにはスポーツドクターが行う医療行為や、我々鍼灸師や理学療法士が行う医業類似行為といった、身体への直接アプローチが必要になる場合に頻繁にでくわします。
この時、アスレチックトレーナーの資格だけでは選手のケアが行えない場合があります。
そのため、現在日本で活躍しているトレーナーの70%以上が鍼灸の免許を取得しています。

鍼灸とスポーツコンディショニングは、現在では切っても切れない縁になっているのです。

しかし、元々はそうではありませんでした。

鍼灸がスポーツ現場で注目されるようになってきたのは、実はここ十数年のことです。

福岡でのスポーツコンディショニングとスポーツ鍼灸の歴史

スポーツ現場で行う鍼灸のことを、スポーツ鍼灸と僕らは呼んでいます。今でこそスポーツ鍼灸や美容鍼など、華やかな世界でも注目されている鍼灸ですが、かつてはそのようなものではありませんでした。

江戸時代、医者というと漢方薬と鍼を武器に患者を治療する、現在のアメリカの鍼灸師や韓国の韓医師と似た予防医学の専門家でした。藩や大名に仕え、医療の中心で活躍していました。
ところが、明治維新の際には『これからは東洋医学より蘭学、西洋医学を推進する』という政策によって規模を縮小され、終戦後はアメリカ軍によって『人を鍼で突き刺すぶっそうな医学』と認定され廃止にされそうになりました。
そんな中でも、効果があったからこそ現在も受け継がれ、最近では世界規模でも先進医療よりも研究予算が組まれるような医療として注目されているのですが、1990年代までの鍼灸のイメージは『腰痛や肩こりに効く、何だかよくわからない民間療法』という扱いでした。

それを危惧した日本鍼灸師会が、『鍼灸をもっと華やかにして、もっとみんなに知ってもらおう!』と打ち出したのがスポーツ鍼灸であり、スポーツ鍼灸が一定の成功を収めたのが福岡で行われた1995年夏季ユニバーシアードでした。

ユニバーシアードとは、国際大学スポーツ連盟が主催する、いわゆる大学生のオリンピックです。

福岡大会にも、162カ国、3,949人が参加しメダルを競いました。

スポーツ鍼灸を広めたかった日本鍼灸師会は、うちの師匠(向野義人医師・医学博士(一部では鍼博士と呼ばれている))と共同で選手村に入り、各国のアスリートを治療して回ったのです。
中には不調と怪我で泣きながら向野先生のところを訪ねたら痛みが取れ、翌日の試合で活躍し銀メダルに輝いた選手もいました。
日本のメダル数が減ったのは我が師のせいです(笑)。

今でこそトレーナーがこぞって取得する免許である鍼灸師ですが、当時の認識は腰痛をちゃちゃっと改善するとか、そのような認識だったようです。

スポーツ鍼灸の発展

その後、鍼灸はスポーツ分野でどんどん発展していくことになります。

まずはスポーツ選手に多い怪我である腰痛などのスポーツ障害への効果からはじまり疲労回復の効果、血流の改善の効果、筋の柔軟性の向上、反応速度の短縮の効果、疲労の軽減など様々な分野で研究が行われました。

野球の投球動作など、同じ部位に繰り返し強い負荷をかける運動では、組織は何箇所も断裂し炎症と血行障害が起こっています。

良くピッチャーがアイシングしているのは、炎症を抑えるためと、15分以上キンキンに冷やすと深部血流が増えるため組織の回復が早くなるからです。

そういった組織の回復に鍼灸はかなり有効です。

鍼灸が有効なのは痛みがある時だけではない

先ほど少し触れましたが、鍼灸を受けると筋肉の反応スピードが早くなることがわかっています。

筋肉は脳からの信号を受け、収縮準備を始めます。準備が整うと本格的な収縮を始めますが、鍼灸施術の後ではこの反応時間が短縮できることがわかっています。

これがどうスポーツに役立つかというと、例えば水泳や陸上短距離などはスタートで0.1秒を競う競技です。
反応時間が0.1秒早くなると、記録にダイレクトに影響します。

それ以外の競技でも、体感的にはいわゆる身体のキレを感じることができるでしょうし、実際に身体がよく動くので練習では質の良い練習が、本番では良いパフォーマンスが発揮できます。

また、円皮鍼という種類の鍼、置鍼は疲労を軽減してくれることもわかっています。練習で疲労が少なければ身体に無理な負担をかけずにうまくなることが可能です。
本来は疲労困憊で動けなくなるはずが、まだ動くことができたり、余計な負荷をかけて関節や靭帯を痛めるリスクを抑えることができます。
これは、野球肘やテニス肘、ジャンパー膝、シンスプリント、足底腱膜炎などのオーバーユース症候群を予防することにもつながります。

あらかじめ鍼を受けておくことで疲労からの回復が早くなることも報告されています。

野球肘の記事で触れていますが、筋肉の出力を余計な収縮を抑えて最大パフォーマンスを最初から発揮することもできます。

 

スポーツコンディショニング領域での鍼灸の効能をまとめると、

  • 筋肉の反応時間の向上
  • 疲労の軽減
  • 疲労からの回復時間の短縮
  • 無駄な筋緊張の改善
  • 血流改善
  • 筋肉の柔軟性の向上など

挙げればキリがありません。

こういった作用を考えると、日頃から鍼灸を受けておくことで怪我やスポーツ障害のリスクを最大限軽減し、練習での身体の動きの質を向上させ反応時間も早くし、しかも疲労せず長い時間の練習が可能になり練習後も疲労からの回復が早くなるということになります。良いことずくめですね。

スポーツコンディショニングをしていて体感していることですが、日頃からしっかりケアしている選手ほど、試合直前に鍼灸を受けるとパフォーマンスが上がります。

ケアをサボりがちな選手は試合前に鍼灸を受けてしまうと身体の使い方が変わりすぎてパフォーマンスが低下する傾向にあります。

こういう選手は、試合の3日前ぐらいに鍼灸を受けるのが良さそうですが、もっと言うと怪我をしたくない、パフォーマンスを上げたいなら日頃からのコンディショニングを心がけてくださいね。

スポーツコンディショニングは選手の特性や競技に合わせて行う必要があります。

アスリートに特に多いのがオーバーユース、使いすぎによるスポーツ障害です。
思うように結果が出ず、練習時間を増やす。過去に出した自己ベストを打ち破れずがむしゃらに練習する。

選手のケアを行っていて、一番よく聞くのがこういった声です。

闇雲に練習してみるのも良いですが、一度立ち止まって身体の声に耳を傾けてみてください(^^)

福岡,福岡市,糸島市,その他糸島エリアでスポーツコンディショニングをお探しの方はご相談くださいね!


筆者情報
小野修司
鍼灸師・スポーツ健康科学修士

鍼灸師の免許取得後、技術と知識の研鑽のために福岡大学大学院に入学。
スポーツ医学を学びながら関節運動の研究を行い修士号を取得。
大学院に通いながらも地域の病院での臨床やアスリートのケアを精力的に行い臨床経験を積んだ。
福岡大学病院東洋医学診療部に鍼灸師として初めて入職を果たし外来診療も担当。
その後、培った技術を大学病院以外でも活かすため福岡市西区今宿に鍼灸院おるきを開院。
1年後、福岡市中央区唐人町に鍼灸院おるき唐人町治療院を開院。
現在に至る。

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